著作権の切れた絵画の画像をアップして訴えられそうになっている話

以前、大学図書館等の古文書のデジタルデータに関する事と称して、著作権切れ絵画作品のスキャン画像の取扱いの話をしましたが、そのようなスキャン画像を wikimedia にアップしたことで絵画の所有者に訴えられかけている人がいるようです:

パブリックドメインの画像を Wikimedia にアップロードしていたボランティアに脅迫的な手紙が届く http://slashdot.jp/yro/article.pl?sid=09/07/27/0156237

今月の 10 日、Wikimediaパブリックドメインとなった絵画の写真をアップロードしていた Wikimedia のボランティアに対し、ロンドンの国立肖像画美術館 (National Portrait Gallary、NPG) から脅迫的な手紙が届く、という事件が発生したそうだ (Wikimedia Foundation の Erik Moeller 氏による報告、カレントアウェアネス・ポータルの記事、本家 /. 記事とその続報) 。
このことに対し、Moeller 氏は「非営利の公共組織であり、英国の歴史や文化を伝えるための組織であるはずの NPG が、教育や文化へのフリーアクセスを推進するためのボランティア組織である Wikimedia を攻撃するとは奇妙なことだ」とし、Wikimedia の活動に対する意義を主張している。

Slashdot.jp での議論はどうも 2ch 並にノイズが多いので、英語が読める人はソースを見たほうがよいです: http://blog.wikimedia.org/2009/07/16/protecting-the-public-domain-and-sharing-our-cultural-heritage/
訴えられそうになっている。このソースによれば、絵画の所有者は絵画自体の著作権切れは認めているが、その複製には複製者の著作権が存在していると主張しているらしい。
前のエントリにも書きましたが、アメリカではこれは既に判例があって、dead copy には著作権は無い、という事になっているのですが、絵画所有者のいるイギリスにはそんな判例は(まだ)ない。それを暢気にアメリカの著作権法でこうなってるからええだろってコピーしてましたっていう Wikimedia のボランティアは軽率だったと私は思います。で法解釈が違う人から訴えるぞと言われた。まあ当然ですね。それを脅迫的っていう訳はどうも、Slashdot.jp クオリティね。
Wikimedia としては、相互の法解釈に違いがあると認めた上で、そういうデータは公共に提供されるべきだという考えを主張してます。訴訟にして白黒付けた方が後々のためによいかもね。もちろん、公開という方向で。
という訳で昔の絵画の画像を使うときは、あえて訴訟リスクを取って皆のために戦ってやろう、という勇者をのぞいて、よくその絵画所有者の国の法律や判例状況を調べましょう。