大学図書館等の古文書のデジタルデータに関する事

この数週間週末は画像処理のようなことをずっとやっていたのです。

最近、江戸時代辺りの古い文献に興味を持っています。そのデータを使ってアレをアアしたり、コレをコウしたり、、、エヘヘ。という訳で、古文書に纏わる話を暫くします。多分皆様の役に立ちません。

少し前までは古文書というと、本物は図書館の奥にしまわれており、閲覧は何か暗黒ギルド結社(=学会)のような物に加入してないとおそらく不可能で、一般人は展覧会で見開き二ページを観るか、解説本の写真(ただしモノクロで細かい点まではもちろん見れない)などしか触れる機会がなかったと思います。

ですがこの頃はインターネッツ様のおかげで、いろんな大学図書館国会図書館で昔の資料をデジタイズしたものを公開するようになってきました。素晴らしいことです。眺めているといつまでたっても飽きません。この頃、皆さんが youtube で時間を無駄にしている横で私は古文書の画像でハァハァしているわけです。
といっても春画とかではないぞ。そもそも春画をデジタイズして公開している所があるのかしらん?当然、春画はオタク(この分野では好事家と言う名前に身を隠していますが)の愛好品であって、美的価値はありません。ですから、将来予定されている児ポ法拡張によって焚書されます。素晴らしくて涙が出ますね。児ポ法思想統制にまで押し進めたがっている馬鹿の方々は、国内に留まらず、この勢いでデブ専ルノアールとか、ダンサーペドフィルのドガとか、ホモのミケランジェロとか、只のエロ親父のロダンとか、ええっとなんだとにかくだ、全部退廃芸術だから、どんどん燃やしたり、ウチ壊すよう、世界に発信していくべきだと思います。ナチスと同じですね。芸術作品ってのはその半数、というか大多数、というか80%、冗談じゃありません、全部が作者の暗いリビドーから生まれるもんです。残りは飾りです。エロい人にしかわからんのですよ。ああ、そういえば村上隆とかはどう考えてるのかしらん?あの人のDoB君以外の立体の数多くはアウツですよね。

さてさて、そんな素晴らしいデジタルライブラリなのですが、実は閲覧を越えた使用を行おうとすると大変に面倒臭い。ある画像をある集会のポスターに使おうと思ったのですが、果たせなかった、というお話です。

某大学は非常に素晴らしいデジタルデータライブラリを提供していますが、データの二次利用に対しては非常に閉鎖的でした。メールを出しても返事が無い。電話を掛けたら掛けたで、あまりやる気の無い対応。使用したい画像(画像ですよ、本物の閲覧ですらないのです)について、非商用利用であっても、その特定の画像でなければいけない理由を説明できない限り、お断りだそうです。じゃあ、初めからウェブにそう書いとけよ、と思いますが書かないのは、

  • 内部で明確なポリシーが決まっていない。人任せである。
  • 利用可能なはずだが、それを認めたくないので明示しない

などの理由があるのではないか、と考えています。
それにしても、その特定の画像じゃないと成り立たない場合、ってのが奮ってますよね。ある特定の画像がないとできないことって、その絵画自体の研究か、その画家の研究以外ありえない。その作品に心底惚れ込んでいるから、とかじゃダメな雰囲気でした。某大学図書館様が私に説明してくれた事がホントならば、他は皆門前払い、という事になります。多分こういうのを回避する一番楽な方法はその大学の同じ暗黒ギルド結社に入っている先生の紹介状、とかなんでしょうけど、一般人だとそれはまず無理な話。

日本国内では、このようなデータの二次利用は大体において、まず問い合わせろ、使用願を出して認可して云々の手順です。使用許諾を出すかどうかは向こうの担当者の印象次第だと思われます。私の場合は研究に使用する、という訳では無いのでお門違いですが、使用願にはまず、何の研究に使用するか、書かねばなりません。研究内容に貴賎は無いはずですが、担当者にとって真面目な物(重力加速度が定数でないことを戦国時代の戦記絵巻から検証する、とか)ならオーケー。不真面目(島原の花魁のカンザシの数が吉原のそれより本当に多かったかどうか)であれば不可、とか十分ありえる話です。

この個々のケースで判断する(らしい)人治主義的な姿勢は、オープンな方向に進めば良いのですけれど、私の印象では逆に事務処理の手間が増えるため、嫌がる担当者が取り敢えずメンドクサイ場合は断る、という逆に閉鎖的な方向に向かっているのではないか。逆に、杓子定規にルールを決めてしまったほうが問い合わせも減るし、問い合わせ側も断られて嫌な思いをせずにすむ。

例えば Biodiversity Heritage Library は昔の生物学関係の本の素晴らしいスキャンを提供している所ですが、Creative Commons の権利設定がされており、実に明解です。日本の機関にたいしては、データを何でもかんでもタダで寄越せ、とは言いませんが、利用ポリシーに関してはもっとデジタル著作権の事を勉強していただいて(だって、図書館ですよ?)、少なくとも利用規約*表示*だけはもっとオープンにしていただきたいと思います。

ここまでは制度がわかりにくい、という点でしたが、ここからはもっとオープンにすべきじゃないって話。

昔の書籍のデータに関しては、元の書籍の著作権がとうに切れていることもありますし、公の図書館としての機能上、広く利用しやすくするべきだと私は思います。例えば非商用なら原典明示の上、とか。いくらかお金を取ってもいいと思います。ハナからダメってのはあまりに象牙の塔で閉鎖的すぎ。

これは私が判例に当たった訳ではありませんが、実は著作権が切れた絵画や印刷物など、二次元の著作物を撮った写真については、複写と同じく、オリジナリティーの入る要素は無いため、著作権は認められない、という判例があるそうです。(三次元の彫刻などに関してはアングル、照明など撮影者のオリジナリティーが勘案されるため、その限りでは無い。)デジタルアーカイブの画像は、元の著作物そのものに近い物を提供する、という存在自体が、その画像の著作性を否定しています。ですから、元の著作権の切れた画像の二次使用等の禁止は、商用、非商用も含め、著作権をもってしては制限できないはずです。他に禁止できる権利としては、財産権、とかでしょうか。例えば鳥獣戯画の持ち主が兎と蛙の手拭いを作って売って利益を得ていた場合、誰かがその画像を取ってきて同じ手拭いを作って売れば、鳥獣戯画の持ち主の財産権が侵害された、という事になるのでしょう。では、手拭いとか作ってない意匠を使ったら?「いや、それで将来ガッポガッポと儲けるつもりだったんだよ」と言うのでしょうか。私にはわかりません。まあ、法律論はよくわからないや。

まとめると、図書館の様な公器が、文化遺産を保存するのは大歓迎ですけど、保存するのと囲い込むのは違うんじゃないですか?ということです。保存にも費用が掛かりますからタダで差し出せとは言いませんが、デジタルデータの利用はある程度の対価を取っても良いですから、もっとオープンであっていいはずです。

今回は、図書館などに問い合わせて、いちいち断られて時間とストレスが掛かるのは嫌ですし、無断で使ってトラブルを起こすのも面倒、素晴らしいデジタルアーカイブを提供してくれている事自体は評価できるし、今日の所は提供元の姿勢を尊重しようということで勘弁しといたるわ。覚えとけよ。(吉本新喜劇調でお願いします)要するに逃げたって事です。チキンですいません。

追記

Wikimedia Commons では法律論に関し明解に答えています: http://commons.wikimedia.org/wiki/Commons:When_to_use_the_PD-Art_tag
基本的には上で私が書いたことと同じです。アメリカでは二次元作品の忠実なコピーには著作性が無いという判例が出ており、インターネットで発見したコピー画像を元作品の著作権が切れていれば、 Wikimedia にそのような画像を貼るのは何ら問題ないとのこと。
ただし、この判例アメリカの話なので、日本ではどうかは責任持てません。でも似た判例があるとどこかのページで読みました。だとしたら非営利集会のポスターに使用するという私の当初の目的も著作権上からは大丈夫なはずです。某大学は嫌がるでしょうが。